夜のつくりかた

闇からたち現れ 羽根を重ね伸ばし 弧を描く さざ波引き連れ 雲となる 光を抱え 闇を引き寄せ 夜となる

夢は 三層。 突き破るには 意外と 力がいる。 今朝、 ビリッと 妙な 音がして。 いまも まだ 夢 うつつ

せん

ゆれて ゆられて 変化する 意思を 持ってか 持たずにか 泉に 糸とは そういうこと、か。

つばさ

つばさを持った 空を 知っているだろうか。 光を受けて 音をつかみ 飛び立つ。 闇と静寂を 落として。 世界は 己に向かい 小さな光が ポツリ ポツリと 放ちだす 空が 再び広がる そのときまで

どろぼう

留守中 どろぼうが 入ったとさ。 なに、 フォークを 持って 角に牙 はめ 顔は 真っ赤に 色塗りさ。 でも、その どろぼう、 70代の ホームレス だった、そ。 フォークを スプーンに。 角も牙も 取り外し。 ピンクに 頬を 染め、 下を向く。

皮はぎ

まだ 泳いでいる つもりみたい。 つい さっきまで いたはずの 透き通った ひろーい 世界を みせてくれた まだ 泳いでるよって。 そうかい そうかい、と。 仕方なく そっと しておいた

紫色

襲ってきた ヤツラを 払いのける 必死に 払いのける フッ フッ フッー 吹き払う だけど ヤツラの 動きに 敵わず。 侵食された あった はずの あの手を 握りしめる 力いっぱい 握り 締める

巻きもどし

飛んでいってしまった お日様を掴まえたい ネジを反対回しに グルグル 巻き取って 取り戻したい この手に この心に もう一度

おてて

クル クル クル ちいさな おててが 大空を 舞った さて 何を 掴むのか クウル クウル クウル おおきな おててが 白い壁を 舞った 何を 掴んだのか おしゃべりな ちいさな おてて おしゃべりな おおきな おてて

すくう

すくいあげる こわれないように くずれないように そのままの 形で ふんわりと ゆっくりと やさしく すくいあげる。 そのものが そのままで そこに あったように やさしく やさしく すくう

ごちそうさま

太陽が 食われて ゆくのを みていた。 最後に 頭を出して もう一度 見せた 顔は 少し ひん曲がってた。 やつは 口の傍に つけた 太陽を 拭って ニンマリ 言った。 どうも、 おつかれさん。 と。

横顔

影を 生産するひとが いて グレーがかった モヤッと したものが 顔斜め半分 覆ってて 気になって じっと じっと 横顔を 見つめる シンっと 静かになると いつも 斜め半分 気になって じっと じっと その横顔を 見つめてしまう

ヒュルリ

きょうは いちにち 風と 太陽が やさしく 遊んで くれました。

ひらひら

うすい ピンク色の ひらひらが 光とともに 舞い降りて 一瞬 一瞬を そっと 終えていく。 ことしの 桜には 一房、一房に たくさんの 魂が 宿ってて みんなに 愛でられるのを それは それは うれしそうに していました。

踏ん張る

フン張って フン張って この ちいさなモノも 踏まないように ふん張って ふん張って この やわらかなモノも 踏まないように 踏ん張って 踏ん張って あっち こっち 見ながら 気をつけながら フンバッテ フンバッテ

いちねん

春 桜の亡骸が 美しく 地面に触れていた 夏 セミと鳥と 二つの 合意を耳にした 秋 死者は それは楽しそうに 棺を運んでいた 冬 この世の 境目が 猫の瞳の その奥に あることを 見てしまう

痛み

トックン トックン ドックン ドックン からだに こころに 沁み渡る 色褪せた 嘆きに 傷の痕 7年目の冬 やっと 到着しました あなたの心。 ドックン ドックン ドックン ドックン 今では 遅い、 遅すぎた ごめんなさい。

車の音 よりも 自転車の音 よりも 人人の声 よりも 足音 よりも 何の音 よりも 空に広がる 雲と雲の その隙間から 奏でる かすかな音が 頭いっぱいに 広がって いました。

おかえり、と 思い出された 久しぶりの朝が 声掛ける。 ああ いたんだ いてくれたんだ。 すきまだらけの ここに いたんだね。 ギュッと 掴んでくれてて ありがとね。

おかね

おかね おかね おかね お財布 忘れて 見えたのは、 出しゃばりで ちょいと きちゃない カタマリ。 ヒョロリと のびた毛 ハズカシ ハズカシ えいっと 引っこ抜く。 見上げた空は 天高く、 スイスイ 進む 自転車に きれい さっぱり 笑顔が ひとつ。

お寝坊しちゃった お月さん。 少し 暗い お空に 不安を感じた やさしい どこかの だれかさん、 墨を すって うっすら 「ノ」と かきました。 遅れて やってきた お月さん キンキラ お洋服に 身を包み 「ノ」の字を ソッと 胸にしまい 今日も 一日 はじめます…

はがして はがして はがしとり けずって けずって けずりとり むしって むしって むしりとり 形も においも 音だって なぁんにも ナクシテ ナクシテ ナクシタテ それでも これでも ある、いる。

ゆく

みどり色の 夜空が 広がる その日、 温かな 握手を 求められました。 ありがとう、と。 こちらこそ、と。 恐れることはない 悲しむことはない 苦しむこともない その、すべてが 抜き取られ その、すべてが 逝くのだから…。 ただ、 この、カラダの この、ココ…

思考

めくる めくる 一枚 めくり もう 一枚 めくる 次の 顔が 出てきやしないか、と。 でも 一枚 先も もう 一枚 先も 同じ顔 落ちた 欠片に 楽しみでも 苦しみでも なんでもない 視線を 落とす。 めくって めくって めぐるのは なんだろか。 同じ顔 同じ破片 同…

ごあいさつ

ひんやり つめたい 空気吸い スッと こころに隙間でき 切なく 哀しく 人恋しく 空いた心に秋廻る。 お元気ですか、と 尋ねては 心の隙が埋まりそう 元気ですよ、と 下されば 秋を満喫できそうです。

わたし

朝 自分の 顔が ある、と 驚いた。 まんまる お目目が ヒックリ びっくり 裏返る

あまりにも きれいで きれいで こころ トキメイテ。 ちょいと つまんで キュッ キュッと 磨いて 指輪に しました。

愚か者

飛び込んできた あなたの 呼吸 苦しそうで 悲しそうで ウロウロ しました。 灰色の不安が 出口を 探しに ウチに 来たみたい。 どうか 落ち着いて どうか ゆっくりと。 次の瞬間 窓 閉め 息を 殺し そっとする。 苦しくて 悲しくて こちらへ おいでと 手招き…

色ぬり

ゴシっ ゴシっ 力を入れて 黄色出す サッササ 力を抜いて 赤色出す この行為 この方法 この視点 ある日 違う感覚 芽生えたの。 突っ切れ 吹っ切れ ここどこだ この手 この目 この感じ。 振り返り 思い返し 裏返し どこにも ないこと 見定めて 足だし 手をだし…

ポケット

かざり。 入れ物。 たまに 手をいれ 安心を いれる。 わたしで いれるため。 いまは たくさんの ポッケが いるんだ。