知っては、いた

口をアングリあけて
ビクリともしない老人が
4人同じような形でベッドに
横たわっていた
胃から直接栄養をとる
経口食が命をつなぐ
知っては、いた
お昼時
食べさせてもらうひと
自分でゆっくり食べるひと
食べたと思ったら出してしまうひと
咳き込むひと
知っては、いた
一点を見つめるひと
歩き続けるひと
お人形を抱いて眠るひと
頭を必死でかきむしるひと
知っては、いた
福祉施設で懸命に
働く人を
働く若い人を
働く笑顔の人を
福祉施設での
ボランティア
知っている、を
確かめたくて
感じたくて
少しでも
近づきたくて…
半日を過ごした
わたしは、知っている
こんなコトバは使えない
何も知らないのだから
何もわかっちゃいないのだから
ちっとも近づけていないのだから