後ろ

鼻水たらした
じいちゃんが
自販機に
いた
何度も何度も
間違った
穴にお札を通す
そこじゃないよ
もう一段下の
ほら…
そこそこ
違うってば…
歩いてお買い物の
母とわたし
見て見ぬふりを…と
思って、けど
結局
戻ってしまう。
お札の入れ場所を
伝えて
そっとその場を
離れた
長い間
自販機のビールを
見ながら
やっとのことで
ビール一本を手に取る。
そして
思いだしたかのように
鼻水を
袖で拭き取った。
昔は迷わず
手を貸して
迷わず
力になっていた
今、こうやって
立ち止まってしまう
何度も
何度も
後ろを振り返り
心にモヤモヤしたものを
抱えて
そしてまた
戻る
想いと行動とが
バラバラで
なんだか
妙な気分
スッキリ
ハッキリ
なぜ
動けないのか。
楽しいときに
嬉しいときに
ついつい
後ろが気になる